硬度試験のベストプラクティス

硬度試験のベストプラクティス

硬度試験の基本

硬度試験は、ほとんどの材料について、そして一定の金属について特に、過去250年以上にわたりさまざまな形で使われてきた、有用で意味のある、一般的に用いられている機械的な試験です。材料の特性としてその価値と重要性は軽視できません。硬度試験による情報は、決定的な意味のある性能情報と、原材料、調製された試料、完成品までのさまざまな部材の耐久性、強度、柔軟性、性能についての情報を提供します。硬度試験は多様な産業で広く使われており、構造物、宇宙航空、品質管理、故障分析、その他のいろいろな製造分野で特に重要な役割を果たしています。

押し込み硬度試験とは何でしょうか?

最も基本的かつ一般に使われているのは、永久的な塑性変形に対する抵抗を調べる試験です。 押し込み硬度は、特定の形状と特性を持つ圧子を材料に一定時間押しつけ、侵入の深さ、あるいは結果生じたくぼみまたはへこみの寸法を測定します。ロックウェル試験は、試験結果が早く出るため最も広く使われている方法であり、特に金属や合金によく用いられます。この試験方法では侵入の深さ、または回復しなかったくぼみに基づいた値が得られます。

正しい使い方の重要性

ロックウェル硬度試験から正確で信頼できる結果を得るために極めて重要なのは、作業者と使用される方法が、正しい試験技術と方法に則っていることです。ロックウェル試験の緻密さと正確さを実現するには、厳しい硬度測定手順を守り、規格に従う必要があります。ロックウェル硬度の通常の測定目盛りの単位はたった0.002 mm (約0.00008インチ)であり、このような精密な測定には極めて正確な測定システムと作業が必要になるのは明らかです。準備や実施手順が適切ではないロックウェル硬度試験のデータは、正確さに欠けたり、読み取り値が誤っていたりするため、規格外の製品の生産や出荷につながるおそれがあります。試験された材料が使用されている製品の性能と健全性に有害な、最悪の結果をもたらしかねません。

ロックウェル試験の技術 - 試験のスケール

  • 試料のタイプ
  • 試料の厚さ
  • 面積 / 幅
  • 試験の位置
  • 試料の均質性
  • スケールの限界

試料のタイプ

適切な方法に従い、適用される規格を守ることは、比較的単純でありながら、正確な値を得るのに大きく役立ちます。ロックウェル試験をどの手順で行うとしても、まず大切なのは、試料に対し、適切な硬度スケールを用いることです。ロックウェル試験のスケールには30種類ありますが、ほとんどの鋼材や真鍮、その他金属を試験するために、ロックウェルHRCおよびHRBというスケールで大多数はカバーされます。一般的な鋼材や真鍮以外の材料に使われる機会が増え、また薄手の材料や鋼板を試験する需要が高まりつつあり、正しいスケールを選んでロックウェル試験を正確に行うため考慮しなければならない要素について、基本的な知識が必要です。スケールは、主な試験力がそれぞれ3種類ある、通常の硬度試験とスーパーフィシャル硬度試験のどちらかに加えて、ダイヤモンド圧子と直径が1/16インチ、1/8インチ、1/4インチ、1/2インチの鋼球圧子から選びます。工学上の仕様は材料設計の段階で確立していることが多いため、作業者は文書化されたスケール要件を信頼することができます。仕様書がない場合や、指定のスケールが適しているか疑問がある場合、以下の要素について分析を行い、スケールを決める必要があります。

試料の厚さ

硬度スケールの指定がない場合、試料のタイプを割り出し、その試料に適用可能な代表的なスケールのタイプをリストしたさまざまな表と照らし合わせます。この作業は通常、過去のデータと経験からくる情報に拠ります。経験則として、その試料が耐えうる最も重い負荷を使うのが、重い圧子のほうが最高の健全性が得られ、また表面の状態の影響が最小限にとどまるため、適しています。一般的に、硬化鋼や他の硬い材料にはダイヤモンド圧子が使われ、球圧子スケールは真鍮、銅合金、アルミニウムなどの材料に適しています。スケールの選択には試料の組成についての情報が必要である一方で、守られるべき正しい試験方法や技術を決める上で、いくつかある他の極めて重要な材料パラメータが考慮される場合もあります。

支持物

スケールを選ぶ上で、まず重要なのは、試料の厚さです。ロックウェルの30種類あるスケールは、総試験力、および、圧子のタイプにより区別され、試料の厚さに対して強すぎる荷重や試験力は、支持アンビルに決定的に影響されます。このように試料の流れに障害が起こると、材料硬度の読み取り値に誤りが出たり、実際の試料の硬度に重大な解釈ミスが起こったりします。ASTM規格では、スケールの厚さは表および図形で定めています。ASTM規格を、試料の厚さをもとに、適切なスケールを決めるための参考として使うことを推奨します。概ね、一般に試料の厚さは、ダイヤモンド圧子を使うときはくぼみの深さの最低10倍、球圧子を使うときは15倍以上あるべきです。必要な場合、くぼみの実際の深さを計算して、この条件を満たしているか確認できます。しかし通常は、参考になる表やグラフから、適切な情報を得た上で決められるため、必要ありません。究極の原則として、試料が支持されている面(下の面)には、材料の変形が生じるべきではありません。

垂直性

ロックウェル試験では深さを測定するため、試料の支持物が極めて重要です。試料が動くと、圧子、さらに測定システムに影響し、その結果、試験に誤りが出ます。精密な試験であるため(前述したとおり、目盛りは通常0.002 mmまたは0.00008インチに等しい大きさです)、0.001インチでも動くと、誤りは目盛りで10を上回ります。試料の形状に合った、試料を完璧に支持し微動さえさせないアンビルを選ぶ必要があり、また、アンビルは十分な剛性を持ち、使用中にいかなる変形も起こさない点が肝要です。すべてのアンビルが満たさなければならない条件がいくつかあります。よい参考になるのはASTME18規格で、アンビルの推奨硬度を含め、基本的なガイドラインが含まれています。支持ショルダーと、試料が接する面は、互いに平行でなければならず、またアンビルは試料を圧子に垂直になるよう保持しなければなりません。試料支持面とショルダーは両方とも、欠けやひっかき傷、汚れがあてはならず、試験中試料を適切に支持するのに十分な設計である必要があります。アンビルは定期的に、一般的には使用するたびその前に、チェックする必要があり、その結果がよくない場合、交換しなければなりません。圧子に損傷や欠け、あるいは汚れがあると、硬度の読み取り値に重大な偏りや、再現性の問題が生じます。試験する試料の形状に合わせて、規格品の固定具や、別注の固定具が利用可能です。比較的一般的なアンビルとして、平たい試料を支持するための平面状の平アンビルや、円柱状の工作物を支持するためのVアンビル、さらに、大径品を支持するための円柱形のアンビルがあります。他に一般的に使われているアンビルとして、スポットアンビルがあります。これは、小さく平らな出っ張りが上についていて、小さな試料や薄い試料、あるいは通常ではない形をした試料や、どこにも平たい底面がない試料を試験するのに使います。試料と、圧子のすぐ下のアンビル部分は必ず接触しなければならないため、その上についている小さな出っ張りは、接触面を小さくすることで、平らな面がないことによる影響を最小限にします。平たい面がない試料を、スポットアンビルに、曲面を下にして置くことで、試験時にアンビルとの接触を確保できます。板状の試料の支持には、ダイヤモンドスポットアンビルが推奨されます。このアンビルには、平らな、研磨されたダイヤモンドの低い出っ張りがついており、試料を支持するとともに、標準的なアンビルでは起こりうる損傷や影響を防ぎます。このアンビルはロックウェルスケールが15Tまたは30Tの場合のみ使用されます。ダイヤモンドスポットアンビルを使うとき、ダイヤモンド圧子を使うことは推奨されません。なぜなら、圧子とアンビルの両方が損傷するかもしれないからです。肉厚が薄い管状の試料の外径面の試験には、S字アンビルが推奨されます。このアンビルには、試験機の送りネジまたは支持ホルダーにとりつけるためのネジがついており、アンビルの一番先には心棒があり、この心棒の上から試料を載せることにより、試験中試料に不具合が起こるのを防ぎます。試料が大きい場合、大径の試験台や、Tスロットで試料を台にクランプするTスロット台を使って支持する場合もあります。Tスロット台の場合そのサイズや重さの都合で、送りネジを動かしてダイヤモンドに試料を寄せるのではなく、底部に固定された静止台に向かって圧子を動かすタイプのロックウェル®試験機上でのみ使用可能です。もう一つ役に立ちそうな機材として、長物測定用治具「バリレスト」があります。長尺の試料を水平に保つのに使います。

くぼみの間隔

くぼみをつける面が、圧子の移動方向に垂直であることと、試験サイクル中に試料が動かないことは、基本条件です。ある研究によれば、試料の面と圧子の移動軸との間に傾き角が1度である場合、HRCスケールへの影響は、硬度の5%の誤差となりえます。正確な試験を行うために、角度が2度をこえる傾きがあってはなりません。試料への圧子の垂直性はさまざまな要因、すなわち試料のもう一方の面や支持アンビル、試験機の機械的な部材などからも、影響を受けます。また、圧子と圧子ホルダーも、垂直性に決定的な影響を与えます。

円筒試験と補正値

試料の試験または硬さ基準片での検証中、くぼみ間および試料の加工端部からくぼみまでは、くぼみ同士またはくぼみと端部の近接により次の試験に影響しないように、適切な間隔が維持されていなければなりません。くぼみの中心から、そのくぼみの直径の3倍以上の距離があるのが、必要条件です。試料の端部からの距離については、くぼみの中心から試料の端部までの距離は、くぼみの直径の少なくとも2倍半なければなりません。このような間隔を置くのは、試験のために作られるいかなるくぼみも、試料の硬化や、先に作られたくぼみの周囲の材料の流れに影響を受けないようにするためです。また端部から距離を置くことにより、くぼみの接触面の適切な支持が確保できます。

表面仕上げ

試料の試験面が円筒形の場合、試験面が平坦である場合より、硬度の値が通常低くなります。これは試験片が曲面であることによるもので、加えられる試験力、試料の硬度、くぼみの形状、試験片の直径によります。試験が管理目的のためだけによるもので、他の要因(試料の直径、スケール、圧子)が同じである場合、比較用データと、あとの試験の評価のための基準となる、十分な情報が得られます。多くの場合はしかし、曲面を持つ材料の硬度と平面の材料の硬度と比べたほうがよく、補正値が必要となります。円筒状の試験片では、横方向の支持が弱くなり、圧子の侵入が深くなるため、硬度計の読み取り値が低くなります。試料の直径が25mm(1インチ)より大きい場合、表面構造は試験に適切であるため、補正は必要ありません。直径がこれよりも小さい場合、試験結果の補正値が必要です。市場にあるデジタルロックウェル試験機はほとんど、円筒の直径に合わせた補正機能を供えており、結果を自動的に補正します。マニュアルダイヤルゲージの試験機の場合、調整する補正値を決めるために、ASTM規格の補正表を参照しなければなりません。逆に、凸型の表面に比べて凹面の場合、その曲面により圧子に対して試料の支持が強くなり、くぼみが浅くなって硬度の読み取り値が明らかに高くなります。この場合、補正値を使って減らした値を必ず得なければなりません。補正はすべて、おおよその結果をもたらすものであり、得られる値が正確な仕様であると期待されるべきではありません。また、試料が円筒形の場合に、半径方向に圧子の方向がぴったり合っていることが重要です。

他に考慮すべき重要な要素

試験の方法して、試料は汚れがなくなめらかで、かつ、凹凸がない状態でなければなりません。試料の表面粗さの硬度への影響は、使われるロックウェルスケールによります。通常のスケールはふつう、仕上げ研磨面に適応し、正確な結果を出します。しかし、試験力が小さくなるにつれ、表面条件の影響が大きくなり、表面がよりなめらかである点が重要となります。一番低い硬度試験力、15Kgfスケールでは、研磨あるいはラップ仕上げされた表面を推奨します。加工した材料が硬くならないよう、試験前に試料を仕上げるときは注意が必要です。
    ロックウェル試験を実施する際考慮すべき、基本的かつ重要な要素は数多くあります。
  • 試料、支持アンビル、圧子、接触するあらゆる表面に、汚れがないことと、試験機全体の状態は非常に重要な要素です。
  • 機器が置かれている環境にも注意する必要があります。。試験機の性能や、硬度の読み取りに影響が出ないよう、過度の振動がある場所は避けるべきです。温度が一定範囲に維持されている点も重要です。ASTM規格は、周辺温度を摂氏10度から35度(華氏50度から95度)とするよう推奨しています。極端な温度下で試験機を操作すると、試験データに悪影響が出る場合があります。
  • 試験機に対して毎日、間接的な性能検証を行うことも重要です。スケールを、規格どおりの仕様の基準ブロックや基準片で検証します。可能な場合、スケールを変える都度、また、シフトを始める都度、機器を検証することが推奨されます。基準ブロックは、試験する材料に相当する範囲のものから選び、較正する側のみ使用します。アンビル、基準ブロック、圧子をセットするために、「前くぼみ」を二つ、作ります。実際に測定する前の、これらの値は無視します。検証作業で、全部で5回測定をとります。測定値は基準ブロック上および基準ブロック仕様に記されている許容範囲でなければなりません。検証結果が不合格である場合、適切な調整または修理を行うまで、作業からその試験機を取り除きます。試験中起こりうるダイヤモンド圧子や球圧子の定期的な目視試験も行い、もし結果がよくない場合、交換します。
  • 最後に、試験機を継続的かつ良好な状態で使用し、ロックウェル試験の精度条件を試験機が満たしているのを保証するために、保守と、資格を持った団体による検定が、不可欠です。ASTMは、ロックウェル試験機を年に一回保守および検証すること、酷使している場合や用途が極端である場合はもっと高頻度に保守と検証を行うことを推奨しています。検証は、認定検証機関により行われなければなりません。結果は、ASTME18「ロックウェル試験方法」にもとづき、それにのっとって報告されるものとします。
  • 硬度試験は、各材料の試験、品質管理と合否判断、各材料の性能面で、重要で有用な手段です。硬度試験の結果に従い、部材の熱処理、構造上の健全性、品質を検証し、私たちが毎日使う物品に用いられている材料が、工学的に正しく設計された、効率的で安全な世の中に貢献するかどうかが判断されます。適切な技法、手順、基準の厳守、そして良好な方法で試験を行うことは、ロックウェル試験の正確さと有用性に大きく貢献します。